社会的課題

企業における早期離職問題の理由と改善方法

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現在、日本のビジネスパーソンの早期離職が問題視されています。

3年以内の大学卒学歴をもつ若者の離職率は、3割にものぼり、採用した新入社員の3人に1人は離職することが厚生労働省の発表の中で報告されています。

この早期離職がもたらす企業への影響と、離職の理由、改善するための科学的な方法を、スポーツ心理学を背景に解説します。

離職率の改善は企業の売上につながる

離職率の改善は企業の売上につながります。

離職率が高い企業は、企業体制に問題がある場合が多く、従業員のエフィカシーや満足度が低く、生産性も低い事が示唆されます。

加えて、育てた人財を手放してしまうことによる資源の喪失は、はかり知れません。

入社後3か月で離職した場合の企業喪失は延べ200万円にのぼる

入社後3か月で早期離職した場合の企業喪失は、延べ200万円にのぼることが、越田1)によって報告されています。

大きく分けると採用経費・在籍費用・教育研修費にわかれています。

採用経費は、採用単価が60万円で人事などの人件費として2.5万円かかります。

加えて、月額の人件費が112.5万円で、教育研修費として12.5万円になると報告されています。

概算すると、入社後3か月で離職した場合の企業喪失は、187.5万円/人になると報告されました。

離職した人の理由は人間関係が50%以上

離職した人の理由は人間関係に関することが50%を超えています。

リクナビNEXTの退職理由の本音ランキング2) によれば下記のような人間関係に関する項目が報告されています。

  • 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らない
  • 労働時間・環境が不満
  • 職場仲間とうまくいかない
  • 社長がワンマン
  • 社風が合わない

これらを概算すると離職した人の50%以上が人間関係における離職であったことがわかります。

離職を改善するための秘訣はアントラージュにあり

離職を改善するための秘訣はアントラージュにあります。

アントラージュとは、スポーツ界で使われる用語のことで、アスリートを取り巻く環境のことを指します。

アントラージュ支援では、アスリートがパフォーマンスを最大限発揮できるように、周囲の環境を整備することが行われています。

特に、スポーツ心理学の研究の中では、保護者・スポーツ指導者・選手の三位一体の重要性が報告されています3)。

これをビジネス場面で置き換えると、保護者は社長や上層部の人間・スポーツ指導者は上司・選手は組織下部の従業員となります。

このトライアングルの連携は、アスリートファーストな環境を整える上でも、従業員の離職だけではなく生産性を改善する上でも欠かせない考え方です。

離職を改善するためのアントラージュに対するコンサルテーション

離職を改善するためにアントラージュに対するコンサルテーションを実施することは有効な手段です。

なぜならば、テニスプレーヤーを対象としたコンサルテーションの実施では、効果が科学的に検証されているためです。

なお、コンサルテーション実施者に関しては、スポーツ心理学のコンサルテーションにおける科学的な知見をもった専門家が実施しています。

下記では、テニスプレーヤーのアントラージュに対するコンサルテーションについて詳しく解説します。

テニスプレーヤーのアントラージュに対するコンサルテーション

テニスプレーヤーのアントラージュに対するコンサルテーションの事例を紹介します。このコンサルテーションでは、アセスメント(図りたい能力を測定する行為)を行い、親・コーチを巻き込んだオリエンテーションを実施しています。

このアセスメントは、図りたい効果によってさまざまですが今回の測定では目標達成行動の影響について測定しています。

このアセスメントでは2つの心理検査を用いて測定しています。

次にワークショップを4回実施しています。

4回のワークショップの実施内容は下記の通りです。

  • 競技力を高めるためのメンタルトレーニング技法について
  • 自分を理解し合理化する
  • 行動を変えるタスクの頻度を上げる
  • 認知の再認識

最後に再びアセスメントを実施し効果を測定しています。

下記では上記のコンサルテーションにおける流れを離職率に合わせて解説します。

離職率を改善するための心理学的コンサルテーション①アセスメント

アセスメントは心理学的コンサルテーションにおいて欠かせません。

なぜならば、人の心理的側面が見えないモノである以上「可視化」する必要があるからです。

心理学領域では、可視化するためにアセスメントを用います。

アセスメントについてはここでは割愛しますが、心理的尺度を用いたりやクライアントの主観的な語りを見える形にします。

離職率を改善するための心理学的コンサルテーション②オリエンテーション

アントラージュ全員に対してコンサルテーションをする上で必要な知識をオリエンテーションで講習します。

この段階ではワークショップ形式などで理論的知識と自分自身の行動を結び付けます。

このオリエンテーションは、1度だけに留まらず繰り返しテーマを変えて行うことが多いです。

離職率を改善するためには、セルフ・エフィカシーは欠かせない要因です。

セルフ・エフィカシーに関しては、下記の記事を参考にしてみてください。

セルフ・エフィカシーについての記事はこちらから

離職率を改善するため心理学的コンサルテーション③クライアントの実行と個別コンサル

クライアントの実行と個別コンサルテーションは、最も重要な期間です。

なぜならば、どれだけ知識があったとしても実際の行動が伴わなければ離職率を改善することが難しいからです。

クライアントがわからなくなったり迷ったりしたときに個別でコンサルテーションができるのは、心理学の専門家ならではです。

離職率を改善するため心理学的コンサルテーション③再アセスメント

ある程度の期間コンサルテーションを行ったときは、再度アセスメントを実施します。

このアセスメントでは、コンサルテーションのインパクトを測定する目的で実施し前後で比較します。

当然のことながら、主観的な語りも得る必要があります。

まとめ

企業が離職率を改善することは、喪失を抑えて人財の育成を円滑にします。そのため売上につながります。

離職した人の理由は人間関係が50%以上であるため、離職を改善するためには会社全体をアントラージュのように変化させる必要があります。

スポーツ領域では、親・保護者・選手に対する心理的なアプローチが試みられています。

離職率改善のためにも有効な手段となり得ます。

本記事を参考にして企業の早期離職改善を試みてはいかがでしょうか。

参考引用文献/参考引用サイト

1) “なぜ人は辞めるのか?退職を科学する”.エン・ジャパン. https://corp.en-japan.com/success/16052.html(最終閲覧日2019年10月24日)

2)“離職理由と退職理由の本音ランキングbest10”.リクナビNEXT.https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/(最終閲覧日2019年10月24日)

3)” The Athletic Triangle: Coach-Parent-Athlete Triad”. UKCOACHING. https://community.ukcoaching.org/spaces/17/coaching-children-ages-5-12/blogs/general/220/the-athletic-triangle-coach-parent-athlete-triad (最終閲覧日2019年10月24日)

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